犬に多く見られる「皮膚・被毛」のトラブル、栄養不足の見直し

「皮膚・被毛」のトラブル

「皮膚、被毛」による疾患は、非常に多くて
外来で診察される方の「15%~25%」は、皮膚疾患として治療を受けるようだ!

皮膚疾患と言っても、原因は様々あるのですが
一般的には「細菌感染、外部寄生虫、アレルギー、真菌病、腫傷」が多い!とされる

犬の皮膚疾患で多い順として

  1. アレルギー性皮膚疾患(ノミ刺咬による過敏症、アトピー性皮膚炎)
  2. 皮膚腫傷
  3. 細菌性膿皮症
  4. 脂漏病
  5. 外部寄生虫病
  6. 食物アレルギー(食物過敏症、食物不耐性)
  7. 免疫介在性皮膚疾患
  8. 内分泌性皮膚疾患




「アレルゲンを持っている。免疫力が低下している。不衛生な環境。」など
こう言ったケースで、「皮膚・被毛」のトラブルを起きやすいのですが、

また、「蚊やノミ」などは、梅雨から夏にかけて発生が多く
「湿度・温度」が高い場合、「紫外線」が強くなることが要因になる場合もある

健康な動物の皮膚は、細菌に対して、一定の防御機能を備えていて
容易には、菌の異常増殖は起こらないのだが

「免疫力の低下・老化」によって、皮膚の抵抗力が失われると
細菌が異常繁殖して、皮膚が化膿することもあるので注意していきたい!




原因は、栄養不足からもある!

「皮膚と被毛」の疾患は、多くの栄養素からも影響を受けると考えられているので
必要とする栄養素も理解していきたいと思う!

目次



栄養不足による皮膚疾患

1.栄養不足による皮膚疾患

栄養不足から、皮膚や被毛のトラブルが発生することもあり、
他の皮膚病との、見分けることが難しい一面もあるが、

皮膚は、代謝器官(代謝活性)と
密接な関連があるため、栄養要求量に非常に影響を受ける

一般的な症状として

被毛色の変化(淡色化、灰色化、赤色化)
脆弱で脱毛しやすい被毛(切れやすい)
脱毛、被毛の光沢が失われる
脱毛の伸張異常


栄養のバランスで、良くある原因は?

自家製(手作り)の食餌によって栄養不足
低品質のペットフードの食餌によって栄養不足
自然食品やサプリメントに含まれる栄養素の過剰摂取


自家製(手作り)の食餌によって栄養不足

手作りご飯を与える場合に陥りやすいのが
栄養素的に不十分で、完全に栄養素を満たせるのが難しい側面がある

高品質な栄養素を摂取できる反面、栄養素のバランスのリスクもあって
一部の栄養素が、不足してしまうことも珍しくない

また、「カルシウム、必須脂肪酸、一部のビタミン」等が不足しやすい


低品質のペットフードの食餌によって栄養不足

通常は、ドッグフード(総合食)を与えていることで
栄養バランスが整っているので、問題ないかと思われるが

低品質のドッグフードによって、消化率が下がり、
低脂肪や必須微量元素(ミネラル)の含量も高く、必須脂肪酸の欠乏も起こしやすい


自然食品やサプリメントに含まれる栄養素の過剰摂取

サプリメントは、体によい栄養素を吸収できる反面
複数のサプリを過剰に与えることで、栄養バランスが崩れてしまうことがある

一部の栄養素を過剰に摂取することで
他の栄養素、例えば、必須微量元素(ミネラル)の吸収を妨害してしまう事に繋がる


授乳期、成長期、妊娠期、一部の疾病時」に、
エネルギー源(タンパク質)の増加が要求されるので、

適切な栄養素が不適切になりがちで、
皮膚と被毛の異常は、これらの時期に起こることもあるので注意したい!




栄養素の欠乏による「皮膚・被毛」にまつわる病状

蛋白質と脂質

角化異常症、被毛における色素失調、二次性細菌(酵母菌感染)、創傷治癒の遅延
褥瘡、休止期脱毛症、成長期脱毛症

必須脂肪酸

過剰な鱗屑(乾性脂漏症)、脱毛症、皮膚の乾燥、光沢の消失、被毛の発育不全
紅皮症、趾間の滲出物

被毛の色素失調、皮膚の粗剛化、光沢の消失、被毛密度の減少

亜鉛

脱毛、皮膚の潰傷、皮膚炎、爪周囲炎、肉球の疾患、被毛の成長遅延、口角の潰傷
角化性局面、二次性細菌(酵母感染)

ビタミンA

脂漏性皮膚疾患、角化異常症、下顎の痤瘡、鼻趾角化症、耳輪皮膚症、胼胝、光線
角化症、皮膚腫瘍、シュナウザー面皰症候群、脂腺炎、魚鱗癬

ビタミンE

円板状エリテマトーデス、全身性エリテマトーデス、紅斑性天疱瘡、
無菌性結節性脂肪織炎、黒色棘細胞病、皮膚筋炎、耳輪の血管炎




蛋白質と脂質(エネルギー源)

蛋白質や脂質のエネルギー源は「新しい皮膚と被毛の発育に必要

蛋白質(アミノ酸)とエネルギー源が不足することで皮膚のバリア機能が失われ
2次的な(細菌、酵母菌)による感染症を引き起こしやすくなる

蛋白質とエネルギー源を不足すると
角化異常、被毛の色素脱失、表皮やゆ脂質の構成異常の原因

蛋白質を欠乏すると
脱毛、被毛の乾燥、光沢の喪失および脆弱化がみられる


皮膚・被毛を作るのに必要さ蛋白質
食餌から摂取したタンパク質の30%が皮膚・被毛に使われていて

「消化・吸収」が重要となるのですが、
消化吸収が不十分の場合は、皮膚を使われる栄養素として利用されなくなる!

ですので、タンパク質の「消化の良い」ペットフードを選ぶ事は、
皮膚の健康を保つためにも、非常に重要になってきますね!




必須脂肪酸

皮膚バリア機能に必須な脂肪酸

必須な脂肪酸は、食餌から摂る必要があり、
細胞膜において構成的機能を保持すると考えられている

必須脂肪酸は、皮膚の健康を保つ上で、
積極的に取っていきたい(推薦)されている栄養素の1っです!

オメガ3脂肪酸(ALA、EPA、DHA)
炎症を抑える(免疫調節、抗炎症作用)に効果が期待

α-リノレン酸(ALA)
エイコサペンタエン酸(EPA)
ドコサヘキサエン酸(DHA)

オメガ6脂肪酸(LA、AA)
角質に含まれる脂質を構成(抗炎症作用にも影響)する

リノール酸(LA)
アラキドン酸(AA)
γ-リノレン酸(GLA)


「皮膚・被毛」の、炎症や 免疫反応に影響を与える

ペットフードに含まれる「脂肪酸」によっては、欠乏に陥りやすく
飽和脂肪酸(動物性脂肪に多く含まれる)、不飽和脂肪酸(植物や青魚)

植物や青魚の多く含まれる「オメガ3脂肪酸、オメガ6脂肪酸」は、
「炎症を抑える働きがある」と、その効果に期待されている

犬に脂質(脂肪)は必要?オメガ脂肪酸どうして重要なの?

「ω-6系」と「ω-3系」の比率

比率については、分かっていない(不確定)な側面も持ち合わせていて
「5~10:1」など、ペッフードメーカーによって異なる

ただ、傾向性として
「ω-6系」は、過剰になりやすく、「ω-3系」は、欠乏になりやすい

また、性質上、「ω-6系」は、強い物質なので、
場合によっては、比率を考慮する必要性も出てきますね!

例えば、アトピー性皮膚炎やアレルギー性皮膚炎の場合

「ω-6系」を過剰に摂取することで、
逆に、炎症を引き起こしてしまい逆効果になってしまうので注意




「ビタミン」と「ミネラル」

ビタミンA

ビタミンA(レチノール)レチナール、レチノイン酸は、ビタミンAとして活性
正常な「視覚、成長、繁殖、免疫機能、上皮組織の維持」に必要

上皮組織の分化機能(特定の物質を合成)及び、増殖や維持(産生を調節)
細胞内で活性化することで、表皮の成長(ターンオーバー)に役立つ

ペットフードには、通常、ビタミンAが最小要求量の数倍以上に含まれているため
ビタミンAの欠乏は起きにくいとされている!





ビタミンE

皮膚は、酸化圧、大気汚染の物質や紫外線(UV)など
あらゆる酸化性物質にさらされている環境となるが、

ビタミンEは、抗酸化物質となり、また、UV吸収能によって
ビタミンEを増加させることで、皮膚を障害から守ってくれる

ペットフードには、通常、ビタミンEが最小要求量の3倍から5倍含まれているため
ビタミンEの欠乏は考えられないとされている!


ビタミンEは、老化(加齢)防止に役立つ「抗酸化作用」のある栄養素でもあるので
積極的に取り入れたい栄養素の1っです
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ビタミンB複合体

「ビオチン、リボフラビン」の欠乏は、皮膚病変を誘発させる

また、ビタミンB複合体のいくつかは、必須脂肪酸の代謝の補酵素として働く
逆に、必須脂肪酸の欠乏によって起きる皮膚病を軽減させる効果もある

ペットフードには、通常、ビタミンBが最小要求量の数倍が含まれているため
ビタミンBの欠乏は考えられないとされている!


とは言え、「ビオチン、パントテン酸、イノシトール、コリン」や
その他のビタミンB、亜鉛、脂肪酸などを補給することで

皮膚機能の向上させ、被毛の柔軟性や外観に改善が見られる
皮膚構造(セラミド)が維持され、皮膚の保湿にも効果が期待される

食餌に、これらの栄養素を追加することで、「皮膚・被毛」の健康に役立つ

ビタミンは犬に必要な成分だが摂取量によって「欠乏・中毒」に



亜鉛

亜鉛は、体内の様々な代謝に関わり、補酵素の中でも重要とされていて
皮膚や被毛の代謝としても、皮膚の機能を正常に保つために重要である

また、亜鉛欠乏によって、必須脂肪酸の代謝にも影響(妨害)を与える

亜鉛の不足で、皮膚病を起こすことなどでも知られていて
亜鉛欠乏からの病変を、亜鉛を摂取することで改善された報告も数知れない

亜鉛が不足する原因としては、通常は、食餌(ペットフード)からの不足は稀で、
相互的に作用によって吸収を妨害することが原因となる


要するに、相互的に作用がある「カルシウム、リン、コバルト、銅、鉛、鉄」など
これらの過剰摂取によって亜鉛が妨害される。また、その逆もある



必須微量元素である「銅」は、様々な生物学的機能に関与していて
コラーゲン、ケラチン、メラニンの合成においても非常に重要な成分

銅が欠乏すると、被毛(色素の欠乏や消失、密度や量の減少、光沢の消失)など
被毛において、質の低下と退色(色あせる)の原因となる

銅が不足する原因としては、
食餌からの不足。銅の利用効率の低下。競合する他のミネラルの過剰摂取。が原因


「銅」の過剰症が問題になることは少ないが
過剰に与えることで「鉄・亜鉛」などの吸収を阻害することもある

ミネラル(灰分)は、犬にとって必要な成分!種類と働き





皮膚疾患において、ミネラルの競合(相互的に作用)

ミネラルは、他の微量元素との競合するため
1つの成分によって、釣り合いを失ってしまい妨害され欠乏が生じる場合がある

ミネラルの競合一覧(競合:〇、不競合:✖)

 カルシウムカドミウムマグネシウムリンモリブデンイオウ亜鉛
カルシウム
カドミウム
マグネシウム
リン
モリブデン
イオウ
亜鉛





アレルギー性皮膚疾患

2.最もメジャーなのが「アレルギー性皮膚疾患」

最もメジャーなのが、
アレルギー性皮膚疾患(ノミ刺咬による過敏症、アトピー性皮膚炎)

アレルギーと聞くと、
食べ物からによるアレルゲンがイメージされやすいですが

食餌の他にも、「薬剤、ワクチン、ノミやダニ、寄生虫、細菌、花粉、カビ」など
そう言った刺激等による原因で、アレルギーを引き起こすことになる

温度や機械的な刺激が原因で、アレルギーになるケースもあるようだ!

要するに、アレルギーとは、
身を守るために取り除く働きをする「免疫」が、

ある物質(アレルゲン)が、生体内に入ってきたことで
何らかの刺激(アレルゲン)に、「免疫」が過剰に反応してしまうことになる

「アレルギー反応」とは、過敏反応とも置き換えられ過敏に反応してしまう事


アレルギー反応がでると
「目の周り、口の周り、外耳道」が、ふちどったように赤く炎症を起こし

「脱毛とかゆみ」がある場合は、アレルギー性皮膚炎を疑います

「ノミやダニ、寄生虫、細菌」は、
「駆除・予防」することで、改善が見込めるのだが

厄介なのが、「アトピー性皮膚炎」ですね!

要するに、アレルギー性皮膚炎(アトピー性皮膚炎)は、
アレルゲンと出会うことで、生涯繰り返すのが特徴となるのですが.....

慢性的に、繰り返して起こる
かゆみのある湿疹が、慢性的に良くなったり悪くなったりを繰り返す病気ですね!

比較的若い(成長期から3年)くらいに発病する傾向があるようで、
初めは、季節によって病状が現れるが、歳を重ねることで1年中に病状が現るてくる




遺伝的な素因が関与してる
 柴犬、シーズー、フレンチ・ブルドッグなどの犬種で発生が多いといわれている

皮膚のバリア機能が正常に働かない
 皮膚のバリア機能の異常、様々な原因が絡み合って引き起こすことも

環境アレルゲンの存在
 ホコリやハウスダスト、カビ、花粉など


アレルギーの原因としては様々あり
類似した皮膚病病状もたすけて、アレルゲンを特定することは難しいです!

環境抗原である、ホコリやハウスダスト、カビ、花粉などに含まれる
空気中のアレルギー物質(アレルゲン)を、吸入して起きるのが一般的だが

アレルゲンを特定できないことや、避けきれないことの方が多いとされている
とは言え、いくつもの原因を除くことも必要不可欠になる!

完治は難しい病気ですが、投薬治療を行うと共に
生活環境の改善も重要になるので、環境を整えることが大切になりますね!

例えば、ダニにとって快適な環境を改善するとか
「布団、じゅうたん、ぬいぐるみ、クッション」などは、細目に洗濯するとか




また、アトピー性皮膚炎は、皮膚バリア機能が低下しているため、
バリア機能を回復させるためのケアーや栄養素を取り入れるのも効果的ですね

  • 皮膚を作る・・・・・・・・・良質なたんぱく質源
  • セラミドを作る・・・・・・・ビタミンB群・ヒスチジン
  • 皮膚の代謝を調節する・・・・ビタミンA・ヒオチン・亜鉛
  • 皮膚の炎症を抑える・・・・・オメガ3系脂肪酸




3.食物アレルギーによる皮膚疾患

食物のアレルギー反応は、皮膚の痒みの他にも、
消化管との関連もあり、「下痢、嘔吐」などの症状が起きることもある

一般的に、
眼・口の周り、肛門周囲、わきの下、背中、手足の先」等の痒みや皮膚炎

食餌(摂取)後の「数分後くらいから2時間以内に発症」される場合もある



食物アレルギーの要因となる、
危険因子(アレルゲン)を特定するのは難しい一面もありますが、

アレルギーを引き起こす原因となるものを、避けるのが重要となる!

「食物アレルギー」として、有力視されているのが
牛肉、乳製品、小麦

他にも「とうもろこし、大豆、豚肉、卵、サバ、イワシなどの青身魚
と、いろいろ上げられる

アレルゲンとなる食物は、主に蛋白質成分に原因にあることが多い




蛋白質・添加物などの成分に特に注意!

ペットフードによっては
「小麦やトウモロコシ」など、穀物が主原材料になっているものには注意したいが

「肉類など、〇〇類や、〇〇副産物、〇〇ミール」などは、
独自のアレルゲンが含んでいると言われていて

原材料の特定ができないペットフードも注意しなければならない

その他にも、動物性油脂も、複数の由来動物が使われていますし
添加物が、含まれているものも、アレルギー反応を起こすケースもある

蛋白質の消化が不完全の場合、抗原性のある蛋白質と大型ポリペプチドが残る為、
アレルギー反応が誘発されることが懸念される

完全に消化されることで、遊離アミノ酸や小型ポリペプチドとなり
抗原性が低くなるので、少なくとも87%以上の消化率が推薦されている




小麦に含まれている「グルテン」も
免疫器官を刺激して、アレルギーや皮膚疾患の原因となることがあります